更新日:2024年4月3日
公開日:2023年10月10日

検索エンジンで「多言語サイトの制作費用」を調べると「およそ500万円~2,000万円」のような情報がヒットします。サイト規模や展開言語数で費用は大きく変わるため幅はありますが、もっと少ない予算でも多言語サイトは制作できます。今回は多言語サイトの制作費用について4つのポイントで紹介します。

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多言語サイトの制作パターンと制作費用の関係

多言語のウェブサイトを制作するパターンは、大きく下記の3つが考えられます。

A:日本語と多言語を同時に制作する場合

例えば日本語のコーポレートサイトのリニューアルと同時に多言語サイトを制作する、というパターンです。

このパターンでは「日本語サイトの制作費用」+「多言語サイトの制作費用」が必要になるため、予算規模が大きくなる傾向があります。「500万円~2,000万円」というのはこのパターンを指しているのかもしれません。

B:既存の日本語サイトをベースに多言語サイトを制作する場合

運用中の日本語サイトから多言語サイトを制作するパターンです。

このパターンでは「多言語サイトの制作費用」だけを検討することになるので、Aパターンよりは制作費用は抑えられます。一方で日本語サイトの構成やコンテンツを多言語サイト向けにアレンジするほど、次のCパターンに近づいていきます。

C:日本語は作らず多言語サイトだけを制作する場合

既存の日本語サイトとは関係なく、海外展開する製品やサービス向けの多言語サイトを新しく制作するパターンです。このパターンでは、新サイトとしての設計工程が必要になるため、「多言語サイトの制作費用」だけを見ると他のパターンより大きくなる傾向があります。

重要なのは多言語サイトの目的

3つのパターンのどれかが正解というわけではありません。多言語サイトの目的や果たす役割に応じて望ましいパターンは変わってきます。

例えばすでにグローバル展開している企業が「情報発信を複数言語で行いたい」という目的であれば、ブランディングの観点からも日本語サイトとデザイン・構成はあまり変えずに多言語の情報発信を行うという判断になると思います。

一方で新しく海外に製品やサービスを展開していくという目的であれば、既存の日本語サイトは考慮せず、いかに海外の潜在ユーザにアピールするかを優先してサイトを設計する必要があります。

多言語サイトの制作費用は、こうした点を考慮して実際にどういうサイトを制作するかで変動します。

費用への影響が大きいのは制作ボリュームと言語数

多言語サイトの制作費用への影響が大きい要素が「制作ボリューム」と「展開言語数」です。制作ボリュームは、主にサイトのページ数や文字数、システム関連の工数の意味です。

多言語展開するサイトのボリュームが多いほど1言語あたりの制作費用も大きくなり、展開する言語の数に応じてそれが増加する、という関係になります。

制作費用に影響する4つの工程

多言語サイト制作を「制作費用」という観点で見ると、下記の4つの工程に分けられます。

  1. 多言語サイトの設計
  2. システム関連の検討
  3. 多言語翻訳工程
  4. サイト制作工程

以下の記事では多言語サイトの制作範囲が明確な「B:既存の日本語サイトをベースに多言語サイトを制作する場合」のパターンを例に、4つの工程を説明します。

1. 多言語サイトの設計工程

展開する言語や多言語サイトの構成を検討するフェーズです。設計次第で後工程のボリュームも変動するため、影響が大きく重要な工程です。

すでに存在する日本語サイトの多言語化を検討する場合は、その日本語サイトと同じ構成の多言語サイトとするのか、デザインや構成を変更して制作するのか、といったことを検討します。

アイ・ディー・エーの制作事例の中でいうと、大きく2パターンがあります。

  1. 日本語サイトリニューアルと同時、またはリニューアル直後の日本語サイトを多言語展開する場合
    →日本語サイトの構成・デザインをベースに多言語サイトも構成(コーポレートサイトなど)
  2. 日本語サイトリニューアル時期とは関係なく、特定の事業やサービスを海外展開する場合
    →デザインや構成を新しく海外向けで構成(事業・サービスサイトなど)

サイト設計が制作費用に影響

どちらのパターンでも多言語化するページ/しないページの検討は重要です。多言語サイト向けに新しくする部分が多いほど設計・デザイン・制作の工数も増え、制作費用も大きくなるためです。

下記の記事では設計段階で適切に検討することで、多言語サイトの効果を落とさずに制作規模を1/4にして制作費用を削減する例を紹介しています。

2. システム関連の検討フェーズ(CMS・多言語化ツール等)

サイト設計と並行して、CMSや多言語化ツールなどのシステム面についても検討します。

多言語展開を検討する規模のサイトであれば、何らかのCMS(コンテンツ管理システム)が導入されていると思います。そのCMSを多言語に対応するためにどういう改修が必要かを検討します。外部の多言語化ツールを導入して多言語対応する場合は、具体的な導入方法や運用方法を検討します。

多言語化ツールはランニング費用として検討

多言語化ツールの費用は固定費になるため、ランニング費用としての検討が必要です。高機能なツールは利用料だけで年間150万円以上になるものもあるため、どこまでの機能を求めるかに応じて検討することが重要です。

多言語対応したCMSを選んでおくことが重要

CMSの改修は一時的な費用ですが、改修の規模が大きいと費用も大きくなりがちです。初めから多言語に対応したCMSを選ぶことでこの問題は回避できますので、初期段階での検討が重要です。下記の記事では多言語CMS選定のポイント、多言語サイトに向いたCMSについて紹介しています。

ドメインやサーバインフラ費用にも影響

多言語ページをサブドメインで展開するのかディレクトリで展開するのかでCMSに対する要件も変わってきますので、サーバ・ドメインといったインフラ周りとあわせた検討が必要になります。

CMSや外部ツールの要件と合わない場合、多言語サイトは別サーバ・別システムで構築となる場合も実際にあります。サーバインフラに影響が及ぶと費用も大きくなりがちですので、多言語サイト検討の初期段階で検討しておきたいポイントになります。

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3. 多言語翻訳フェーズの費用

サイト設計とシステム面の課題が解決できたら、具体的な多言語サイトの翻訳・制作に入ります。

言語が増えると翻訳費用も増える

翻訳費用は言語ごとに必要になります。例えば3言語に対応するサイトで1言語の翻訳費用が約50万円必要な場合、翻訳費用の合計は概ね150万円前後ということになります。もう1言語加えて4言語になると約200万円になり、展開言語が増えるほど翻訳費用も増大します。

訪日外国人向け(インバウンド)のサイトでは英語・簡体字・繁体字・韓国語の4言語に対応することが標準的なので、翻訳費用が大きくなる傾向があります。設計段階からそれを見越してサイト/コンテンツを設計しておく、などの工夫が重要になります。

機械翻訳と人力翻訳、どちらを選ぶべき?

現在では多言語サイトに機械翻訳・自動翻訳を検討されることも多いと思います。
翻訳費用を削減するためには非常に有効な選択肢ですが、重要な検討事項も存在するため下記の点にご注意ください。

機械翻訳をそのまま使用しない

Googleのポリシーでは機械翻訳をそのまま使用することはポリシー違反になり、ペナルティの対象になる可能性があります。

自動ツールで翻訳されたテキストが、人間によるチェックや編集を経ずに公開されたもの

引用元:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー

機械翻訳の精度は飛躍的に向上していますが、ノーチェックで公開してコンテンツの品質を保てるレベルではない、という判断のようです。

海外SEOでは翻訳の質=コンテンツの質

現在のSEO(検索エンジン対策)では、良質なコンテンツをなるべく多く発信することが重要になっています。外国語でコンテンツを量産できるという特殊な場合を除くと、海外向けコンテンツの質は翻訳の質に左右されることになります。

時間と費用かけて良質な日本語コンテンツを作成しても、翻訳の質が低いと海外向けには十分な効果が出ないかもしれません。機械翻訳に「かけっぱなし」は論外としても、なるべく質の高い翻訳でコンテンツの質を担保することが海外ユーザに伝わるかどうかを左右すると思います。

機械翻訳と人力翻訳のハイブリッド「ポストエディット」

機械翻訳と人力翻訳、両方のメリットを活かした「ポストエディット」という選択肢をご存じでしょうか。
機械翻訳にかけた原稿を翻訳者が確認し、正確性や自然さを向上させる編集を後工程として行う手法です。
機械翻訳(Machine Translation)をポストエディット(Post Edit)するため、略して「MTPE」と呼ばれることもあります。

機械翻訳と人力翻訳両方のメリットを活かし、費用と時間を節約しつつ翻訳の質を向上する選択肢としてビジネスの現場で活用が広がっています。

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4. サイト制作フェーズの費用

多言語翻訳したテキストを最終的なウェブページとして完成させる工程です。

基本的には分量と言語数。文字画像の多用に注意

この工程でも基本的には対象となる制作ボリュームと言語数が費用に影響します。より多くのページをより多くの言語で制作するには、制作費用も必要になるという関係です。

文字を含む画像を多用したサイトでは、その画像の多言語版を制作する必要があり、制作工数も増える傾向があります。例えば観光マップ画像がいくつもある訪日外国人向けのサイトや、画像化した文字を多用するランディングページなどは多言語対応の費用が大きくなります。

多言語展開するサイトでは文字画像を多用せず、デバイステキスト中心で制作するのが望ましく、次で紹介するHTML直接翻訳のように、制作費用を抑える方法の効果も大きくなります。

HTML直接翻訳で手間と費用を削減

外国語のウェブページを制作するときに、翻訳を手動のコピー&ペースト作業で反映していくと思われていることが多いのですが、実はHTML直接翻訳する方法が存在します。翻訳者の翻訳を直接HTMLに反映することができるため、多言語サイトの制作工程で大きな省力化が実現でき、制作費用の圧縮と納期の短縮が可能です。

HTML直接翻訳については下記の記事で詳しく紹介しています。

まとめ

多言語サイトの制作費用について、前提となる大きな要素と4つの制作工程に分けて説明しました。主なポイントとして下記のものがあります。

  • 費用への影響が大きいのは制作ボリュームと言語数
  • 多言語サイトの設計工程次第で制作費用も変動
  • 事前に多言語対応したCMSを選ぶことが重要
  • 多言語化ツールの導入はランニング費用も含めて検討を
  • 海外SEOでは翻訳の質=コンテンツの質
  • 機械翻訳かけっぱなしはGoogleのポリシーに違反
  • 制作フェーズではHTML直接翻訳でコストダウンも可能

多言語サイトの制作費用はサイトの規模や展開言語数で大きく変わってきますが、工程を細かく見ていくと事前の検討で制作費用を大きく削減できたり、技術的な対策で工数を減らすことができることがわかります。

ウェブサイトは事業の目的を達成するためのひとつのツールに過ぎませんので、サイトの目的と役割に応じた適切な予算での制作が必要になります。その中で最大の効果をあげるためにどのような選択肢が考えられるか、ぜひアイ・ディー・エーの多言語サイト制作部門にご相談ください。

WEBチーム:堤

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