英文開示の翻訳を翻訳会社に依頼するときのポイントを解説

WEBチーム:堤
2024.10.30 2024.10.30

2025年4月に東証プライム市場上場会社を対象に義務化・努力義務化が始まるIR資料の英文開示について、東京証券取引所の「英文開示実践ハンドブック」の内容を解説するシリーズの3回目です。今回は英文開示の翻訳を翻訳会社に外部委託するときのポイントを解説します。

※2022年9月22日 東京証券取引所 英文開示実践ハンドブック

アイ・ディー・エーでは決算短信から適宜開示文書、統合報告書まで多くの企業様の英文開示用の翻訳をお手伝いさせていただいています。翻訳だけでなく、日英のドキュメント制作までまとめて対応することも可能です。英文開示資料の翻訳や制作に関するご相談、無料お見積りのご依頼は下記のリンクから承っています。

東証ハンドブックの第2章では、英文資料作成のための翻訳を翻訳会社に依頼する場合の流れとポイントが記載されています。ここではその内容に加えて、翻訳会社の立場からより実践的なフローで説明します。

  1. 依頼する翻訳会社の候補をリストアップする
  2. 見積依頼と内容検討のポイント
  3. 委託先の決定・契約・進行
  4. 納品データ確認・英文資料の開示

依頼先候補の翻訳会社をリストアップする

第1章で検討した英文開示の範囲や対象文書について、翻訳を依頼する翻訳会社を選定します。見積依頼先の候補となる翻訳会社のリストアップでは、下記のポイントを参考にしてください。

  • 英文開示翻訳についての過去の実績や経験値
  • 翻訳の専門性や品質、管理体制が自社の要件にマッチすること
    (翻訳の国際規格ISO17100の取得など)
  • 翻訳のみを依頼したい/翻訳に加えて文書レイアウトも任せたいなどの制作要件があれば、それに対応できること
  • 英文開示だけでなく日本語版の制作から依頼したい等の要望がある場合は、その対応可否

自社の英文資料制作フローや体制がまだ定まっていない場合は、制作全体の進め方や不明点を相談しやすい会社を選ぶこともポイントになると思います。

見積依頼と内容検討のポイント

依頼先候補をリストアップしたら、実際に翻訳見積を依頼します。複数社に見積依頼する場合は依頼内容や要件をなるべく明確にして、各社の見積条件が揃うようしておくことが重要です。具体的には下記の点を検討することをお勧めします。

翻訳対象となる文書と範囲(翻訳対象文字数の把握)

ある文書を初めて翻訳する場合は翻訳対象も明確ですが、例えば前年の資料の改定分だけを翻訳する場合などは注意が必要です。

  • 翻訳対象箇所の指定や変更指示をどのように行うか
  • 新旧差分の確認作業から翻訳会社に依頼したい場合は、その旨を要件に加えておく

翻訳に関する要望や付随作業の詳細

例えば下記のような要望や条件がある場合は、見積依頼の段階で明確に伝えておくことで、後になって想定条件が異なるというリスクを減らすことができます。

  • 表現の好みの明確化
    既存の英文開示資料が存在する場合、その英語表現と整合性を保つのか、新しい翻訳としてブラッシュアップするのか。
  • 用語やスタイルの統一
    従うべき社内用語集やスタイルガイドがある場合は、その内容を共有しておく。そういった資料が存在しない場合、用語集等の作成を見積の範囲に含めるかどうか。
  • 参照資料の優先順位
    複数の参照資料がある場合、その優先順位や参照の方針を伝えておくことで、無用な工数増加を防止できます。
  • 納品形態
    東京証券取引所の様式例に翻訳を上書きするか、日本語原稿に上書きするか等。資料の体裁や納品データ形式などの要件を具体的に伝えます。

翻訳以外の依頼事項の有無とその詳細

翻訳した文書のレイアウト作業や、資料を掲載するウェブサイトの更新用のデータ作成など、翻訳以外の依頼事項がある場合はその点も明確にしておきます。

さらに、日本語資料の作成や改定からまとめて依頼することで効率化や自社の負荷低減が期待できる場合は、そういった対応が可能かどうかも、あわせて相談してみることも有用です。そのうえで

  • 機密保持の締結
  • 翻訳見積用の原稿
  • 用語集等の関連資料

等をまとめて見積依頼を行えば、各社の前提条件も揃い、依頼先の検討も行いやすくなります。

委託先の決定・契約・進行

各社の見積が揃ったら最終的な依頼先を検討します。組織ごとに選定の基準は異なると思いますが、金額・納期に加えて翻訳会社からの提案内容も検討に加えることをお勧めします。

翻訳会社からの提案を評価する

様々な企業の英文開示資料の翻訳を手掛けている翻訳会社であれば、英文資料作成のワークフローやチェック方法・体制などについて多くの知見が蓄積されています。自社が想定しているワークフローより効率的なフローがあれば、見積段階でそうした提案があると思います。

例えば決算短信のサマリーと、非財務情報も含むページ数の多い統合報告書では、翻訳やドキュメント制作フローの検討事項も異なります。

依頼する原稿と求める品質を達成するための提案があれば、積極的に検討に加えてみてください。

契約・進行

翻訳の依頼先が決まったら、業務委託契約を結び、実際の業務を進行します。
見積の段階で依頼範囲や原稿、参考資料等をしっかり準備しておくことで(どの翻訳会社に依頼するにしても)実際の業務依頼から先の工程をスムーズに進めることができます。

納品データ確認・英文資料の開示

成果物が納品されたら、受け入れのチェックを行います。翻訳のみを依頼する場合とレイアウトも含めた制作全体を依頼する場合でチェック内容も変わってきますが、下記の点を中心に行うことになると思います。

  • 数値が正しいか(財務情報の開示資料では特に重要)
  • 勘定科目や固有名詞などの用語が適切に訳出されているか
  • 誤訳や訳ぬけがないか
  • マイナス表記や単位、期間の表記が適切か
  • 文書のレイアウトを含めた全体の最終チェック

見積や制作依頼の時点で表現の好みや自社の要求レベルについて共有しておけば、この段階でそれらの認識が大きくずれることはないと思います。最終的な英文資料の開示作業もスムーズに進められると思います。

まとめ

英文開示の翻訳を外部に委託する際、精度の高い翻訳と信頼できるパートナーを選ぶことが、IR資料の正確性と信頼性を確保する鍵となります。翻訳会社の選定から見積、進行管理、納品まで、各プロセスでしっかりとしたコミュニケーションを図り、対象範囲や独自の要望といった要件を事前に明確にすることが重要です。

初めての委託で不安がある場合や、複雑なドキュメントの制作を要する際には、経験豊富な翻訳パートナーと協力し、最適なワークフローで進めることで、業務の効率化と開示資料の品質向上が図れます。

英文開示資料の翻訳についてお悩み事やご相談がございましたら、下記のボタンからお気軽にご連絡ください。

ライターWEBチーム:堤

翻訳会社内の多言語ウェブ制作部門に所属。B2Bサイト・インバウンドサイトなど多くの多言語サイトの制作・運営に携わる。