更新日:2023年6月29日
公開日:2022年5月30日

マーケティングを重視した翻訳を行う際に、より効果的で訴求力の高い表現を用いるために「トランスクリエーション」がクローズアップされるようになってきました。トランスクリエーションとは、「翻訳(translation)」と「創造(creation)」を組み合わせた造語で、正確な翻訳に加え、海外でのマーケティング戦略を意識したより訴求力の高いクリエイティブな訳文を目指す試みです。アイ・ディー・エーでは以前から、英語翻訳においてネイティブチェックや訳文のリライト(トランスクリエーション)を行ってきました。当社でのこれまでの取り組みや今後の方針についてお伝えします。

海外マーケティングで必要とされるクリエイティブな翻訳

広く英語圏全般の情報提供には「世界標準の英語」

翻訳サービスに対する要求はさまざまです。製品やサービスのマニュアル、社内文書、商品カタログ、広告やWebサイトの翻訳など、それぞれに求められる着地点は違うもの。たとえば社内的なツールを翻訳する場合には、原文に忠実に訳したり、英語圏のどの地域であっても理解できる「世界標準」の英語を使用したりすることが重要です。

特定の国や地域のネイティブをターゲットにした「トランスクリエーション」

一方で、近年、お客様のご要望で増えつつあるのは、よりクリエイティブ要素の強い「トランスクリエーション」の領域です。原文の情報を維持しながら、ターゲットとなる国や地域のネイティブが読んでも自然で流暢な表現に意訳することで、製品などの販売促進や企業のブランドイメージの向上に大きな影響を与えると考えられています。マーケティングを強く意識した翻訳は、今後ますます海外戦略には欠かせない要素となっていきそうです。

正確な翻訳+ネイティブによるクリエイティブなリライト

より自然で流暢な翻訳サービスを提供する過程で、当社の作業フローにはいくつかのステップがあります。まず、原文の日本語を正確に理解する翻訳者(日本人またはネイティブ)が、翻訳データベースを活用しながら訳文を作成します。

翻訳データベースとは、過去に翻訳した内容を文章・文節ごとに保存した「翻訳メモリ」と、専門用語・固有名詞などの対訳を登録した「用語集」の2つを指します。用語や表現の統一に役立つことに加え、原文の部分改訂が必要になった際には、自動解析によって再翻訳が必要な箇所を効率的に抽出することができます。精度の高い翻訳が行えるうえ、翻訳コストのスリム化にも貢献しています。翻訳データベースの活用については、下記でも紹介しています。

翻訳データベースを活用しながら原文に忠実に翻訳された訳文は、お客様のご要望に応じてネイティブスタッフによる文法チェック、さらに、クリエイティブな要素を重視される案件にはネイティブによる訳文のリライトへと進んでいきます。

実例紹介:トランスクリエーション(リライト)前後の訳文を比較

リライトを行う際には、ターゲットとなる国や地域の文化や習慣などを熟知したネイティブが、原文を見ずに作業を進めます。文のエッセンスだけを取り出し、語順や文脈を大胆に変えながらクリエイティブ性を発揮できるのがメリットです。もちろん、あまりにも原文からかけ離れてしまうと問題になりますので、最後に日本人によるチェックもしっかりと入れます。

広告におけるキャッチコピーは、まさにその代表格。シンプルなテキストのなかに深いメッセージが込められています。キャッチコピーには造語や比喩、慣用句も多く見られます。母国語であれば問題なく意味を理解できるかもしれませんが、それらを外国語に翻訳するとなると一筋縄ではいきません。シンプルな単語の羅列だからこそ、一語一語がとても重要な意味を持ち、その国や地域の文化的背景を知らずに言葉を並べてしまうと失敗することもあります。

直訳に近い翻訳とリライトの違いがわかる例として、ことわざを見てみましょう。

「蓼食う虫も好き好き」ということわざには、苦くて辛い蓼を好む虫がいるように、好みは人それぞれである、という意味がありますが、英語の直訳とリライトをくらべてみるとこのような結果になります。

直訳: Just as some insects eat water pepper, everyone’s tastes differ.

リライト: There is no accounting for taste. → 人の好みは説明できない。

日本語の原文に忠実な直訳は、英語に置き換えるとまったく意味の伝わらないか、かなりくどい説明の文章になることもありますが、原文の意味に該当する表現にリライトすることで、同じニュアンスを自然に伝えることができます。

英語ネイティブ向け海外マーケティングに最適な翻訳

当社では、ネイティブによるチェックやリライトを行ったあとに、英語に精通した日本人スタッフが見直し・校正を実施し、原文との乖離がないかを再度チェックしています。

用語の統一や誤訳の防止を実現するための徹底的なチェックシステムは当社の強みであり、お客様から絶大な信頼を獲得しています。

今後は、その強みを活かしながらトランスクリエーションへの取り組みをさらに強化し、お客様へより高品質な翻訳サービスを提供していきます。海外でのマーケティング戦略に欠かせないトランスクリエーションについて、ぜひアイ・ディー・エーにご相談ください。