翻訳に適した原文(日本語)の書き方の重要性。「係り受け」に注意
当社では、経験豊富な翻訳者がCAT(Computer Assisted Translation)ツールと呼ばれる翻訳支援ソフトウェアを使用して、精度の高い翻訳サービスを提供しています。また近年は、機械翻訳をベースとしたご依頼も増加しています。翻訳支援ソフト、機械翻訳いずれの場合でも、原文(日本語)の書き方によっては原文の構造を適切に解釈できず、誤訳につながる可能性があります。誤訳を回避するための原文(日本語)の書き方について、当社でのチェックポイントを紹介します。
「係り受け」を意識した文章作成の重要性
主語と述語、修飾語と被修飾語など、前後の単語のつながりで成り立つ言葉の関係性を「係り受け」と表現します。翻訳の際は、単語がどの単語に係っているのか、あるいはどの単語を受けているのか、前後の文脈も参考にしながら適切に判断する必要があります。一語ずつの組み合わせであれば作業は容易ですが、複数の単語が羅列されている場合、区切る場所を誤れば同じ言葉であっても違った意味に翻訳されてしまいます。
例文(1)
以上3つの栄養素の効果を実験で検証した動画もあります。
(誤)We also have a video showing the effectiveness of the above three nutrient as verified by experiments.
(正)We also have a video showing the effectiveness of the above three aspects of nutrients as verified by experiments.
この例文では「以上3つ」は「効果」に係るのが意図していたところですが、訳文(誤)では「栄養素」に係っています。「栄養素が持つ上記3つの効果」など、係り方が明確な原文(日本語)を作成すると、誤訳を防ぐ可能性が高くなるでしょう。
例文(2) 市民課および各コミュニティーセンターでの窓口交付手数料より200円安くなります。
(誤)It costs ¥200 less to get a copy of various certificates at a convenience store, compared to at the Citizens’ Affairs and over the counter each Community Center.
(正)It costs ¥200 less to get a copy of various certificates at a convenience store, compared to over the counter at the Citizens’ Affairs and each Community Center.
訳文(誤)では「窓口」が「コミュニティーセンター」にしか係っていません。実際には「市民課窓口およびコミュニティーセンター窓口」という意味ですが、原文(日本語)では「窓口」が1つに省略されていました。「市民課窓口および各コミュニティーセンター窓口での交付手数料」と書いてあれば、誤訳は少なくなりそうです。
複数の意味に解釈できる場合や、前後の文脈からしか判断がつかないような表現は、冗長になっても情報をなるべく省略せずに記載するのがポイントです。
慣用句、比喩、代名詞に注意し、不要な情報は極力削除が望ましい
慣用句や比喩表現にも注意が必要です。日本語と同じ意味の慣用句が存在することもありますが、機械翻訳は特に抽象的な文章の翻訳が不得意です。直訳される場合が多く、意味が通じない訳文になることもあります。なるべくシンプルで直接的な表現の方が、誤訳が少なくなるでしょう。
また、そもそも海外版では不要であったり言い換えが必要になったりする情報もあります。これらの情報が翻訳対象であった場合、翻訳したのちに内容の変更・削除が必要になる可能性があります。日本でしか通用しない情報はあらかじめ極力取り除くことで、コストダウンにも繋がります。
【不要または言い換えが必要な表記の一例】
■ふりがな
■和暦
■日本独自の法律・規格名(JIS、リサイクル法など)
■日本独自の単位(尺、畳、合、石など)
■海外からつながらないFAX番号
日本語では主語を省略することが多いため、訳文では主語や代名詞を補足する場合もあります。背景知識について海外向けに補足説明を入れることもあり、原文(日本語)と訳文との間で情報の足し算、引き算が必要になる場合があります。このような場合、当社ではお客様への申し送りをしっかりと行い、原文(日本語)を尊重しつつ、ターゲット言語にとって自然な翻訳になるよう心掛けています。
原文(日本語)の書き方は訳文の品質を左右する
近年は機械翻訳の精度が格段に向上しており、コスト面を考慮して機械翻訳をメインに考えたいという企業様も多いのではないでしょうか。確かに機械翻訳の流暢性の向上には目を見張るものがありますが、原文(日本語)が明瞭でなければ、適切な訳文を作成することは難しいでしょう。 機械翻訳であっても、翻訳者による翻訳であっても、原文(日本語)の書き方は訳文の品質を大きく左右します。文章の係り受けや日本語独特の表現や情報に配慮したシンプルで直接的な文章は、誤訳の防止やコストダウンにもつながります。
さらに当社では、よりスムーズな業務遂行のために、定訳のある会社名、組織名、部署名、個人名などをお客様へあらかじめお伺いし、可能な範囲で業界用語や社内用語などの説明や資料の添付をお願いしています
当社は、翻訳業界で25年の実績をもち、あらゆる翻訳ノウハウに精通しているほか、WEB制作会社としても数多くの受注実績があります。原文(日本語)作成や機械翻訳についても、経験豊富なスタッフにぜひご相談ください。
翻訳しやすいデータ作成のコツについても、下記のページでご紹介しています。
「翻訳しやすいデータ作成のコツと最適なアプリケーションは?」
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