2021年8月31日

多言語翻訳をご依頼いただくお客様からお預かりする日本語データは、さまざまなアプリケーションで作成されています。中には、翻訳業務と相性のいいアプリケーションとそうでないものがありますが、機能性の問題だけでなく、データ作成時のちょっとしたことが、思わぬコストアップにつながることも。翻訳コストを節約するためのデータ作成のコツとおすすめのアプリケーションをご紹介します。

多言語翻訳の持続可能なコストダウンのために

当社では、多言語翻訳からWEBサイトや印刷物の制作・納品までをワンストップで行い、お客様のさまざまなニーズに対応しています。日本語版の制作段階から関わらせていただくこともあれば、すでにお客様の方で制作された日本語のホームページ、マニュアルやカタログなどの印刷物をもとに多言語化する案件も少なくありません。

当社では、CAT(Computer Assisted Translation)ツールと呼ばれる翻訳作業を支援するソフトウェアを使用して、より精度の高い翻訳を提供するとともに、作業工数の削減、納期の短縮、持続可能なコストダウンのご提案も行っています。

そこで重要なのが「業務の効率化」です。CATツールを適切に稼働させることで、作業量や納期、コストなどの大幅なダウンサイジングが可能になりますが、そのためにはお客様からご提供いただく翻訳対象データ、いわゆる「(翻訳)元データ」がカギを握ります。

データの作り方次第でコストパフォーマンスは大きく変わる

翻訳業務を行うための「元データ」になるものとしては、WordやExcel、PowerPointなどがポピュラーです。

当社では、それらのアプリケーションで作成されたドキュメントをお預かりしてテキスト情報をCATツールに読み込み、作業を進めていきます。これらMicrosoft Office系アプリケーションはCATツールとの互換性があり、翻訳工程は比較的スムーズですが、一筋縄ではいかないことも。それには、データの中の「リターンキー(改行)」の存在が影響を及ぼしています。

見た目重視の「改行」がコストアップにつながるおそれも?!

WordやExcel、PowerPointでの文書作成時に、文章の途中で区切りのいいところに改行を入れ、レイアウトを整えることがあると思います。

実はその一手が翻訳コストをアップさせる一因にもなり得るのです。リターンキーによって改行が行われ、文章が分断されてしまうと、翻訳支援ツールを使用した際に、一文すべてをトータルで解析することができません。改行毎にテキストが途中で分断されてしまうため、翻訳メモリなどの翻訳資産をうまく活用することができず、思わぬコストアップや品質低下につながることがあります。

また、画像化されたグラフや写真に文字を載せて加工し、画像データとして保存されたものも、テキストデータを抽出することができません。リターンキーを削除したり、画像化された文字をテキストデータとして再入力したりするなど、人的作業が発生することで時間的にも工数的にもボリュームがアップし、コストがかさむ原因となります。多言語翻訳のための元データを作成する際には、レイアウトのための改行キーは多用せず、できるだけなりゆきにまかせて入力していただく、グラフなどは画像化する前の状態でご提供いただくとスムーズです。

昨今機械翻訳の活用が広がっていますが、不要な改行で文章が分断されてしまうと、正しい翻訳は出力されませんし、画像化された部分は機械翻訳の出力対象外となります。翻訳支援ツールや機械翻訳など、せっかくコストダウン目的のツールを導入しても、「元データ」の作りが悪ければ望んだ効果が得られないことになります。

多言語翻訳を考える場合、Illustratorのメリット・デメリットは?

WordやExcel、PowerPointなどのアプリケーション以外にも、DTP(デスクトップパブリッシング)アプリケーションで使用されるIllustratorで作成したデータで多言語翻訳業務を受注する機会が多々あります。1986年に開発されたもので、印刷工程との相性がよいという理由で、10年、20年とデータをアップデートしながら使用されているお客様もいらっしゃいます。

日本語のみの媒体を作成する場合、Illustratorのデータ流用を続けることは一定のメリットがあると考えられますが、多言語翻訳を視野に入れた場合、残念ながらあまり有益ではありません。Illustratorは多言語翻訳には欠かせない翻訳支援ツール(CATツール)との互換性がなく、手作業もしくは別のツールを活用して翻訳テキスト抽出を行う必要があるため、時間的にもコスト的にもロスが生じてしまいます。

印刷用データや閲覧用PDF作成にInDesignをおすすめする理由

当社では、印刷用データやウェブサイトにアップロードして閲覧してもらうためのPDFを作成され(カタログやマニュアルなど)、多言語翻訳を必要とされているお客様に、翻訳支援ツールとの互換性があり、多言語翻訳にも最適なDTPアプリケーションのInDesignの使用をおすすめしています。

Illustratorのデータを早期にInDesignに置き換えることで、翻訳に適したデータ作成を実現でき、これまでに要していたコストや時間の大幅削減が可能になります。一時的なコストアップに躊躇される場合もあるかと思いますが、5年先10年先を見据えるとトータル的には経費削減となり得ます。

制作データや翻訳データなど全てのデータは企業にとっての「資産」でもあります。効率的に活用することで、結果的には大きなメリットとなりますので、データ作成や完成データの保守・管理について、ぜひ当社にご相談ください。

翻訳データを企業の資産として活用するメリットについては、下記の記事で解説しています。

関連記事:「翻訳資産」となる翻訳データベースって何?