2021年1月26日

機械翻訳は、数十年前から学問的な研究が続けられてきましたが、インターネットの普及とともにWEBサイト上で簡単に使用できる機能も登場し、一般的にも身近な存在になってきました。
機械翻訳の精度は、ここ数年で飛躍的に高まっています。私たち翻訳会社にとって機械翻訳とは、どのような存在なのでしょうか。いつか機械に仕事を奪われて、翻訳会社はお払い箱となるのか?!いえいえそんなことはありません。その理由とは?

機械翻訳の「精度90%以上」は本当か

ニューラル機械翻訳の登場で、機械翻訳の精度は飛躍的に向上しました。機械翻訳を導入したいと考えている企業も多いのではないでしょうか。もし、あなたの会社に、機械翻訳エンジンのパンフレットを携えたセールスマンが来て、
「この翻訳エンジンを購入することで、必要な翻訳作業はほぼ機械化でき、翻訳精度は90%以上です。こんなにたくさんの企業さんも導入されていますよ。」
という言葉を耳にしたら、契約する前に、自社のニーズに合う製品かどうか、じっくり検討してみましょう。

確かに、セールスマンが示す翻訳データのサンプルは、精度が高いものである可能性はあります。機械翻訳が得意とする、シンプルな文章であれば、95点、100点の翻訳に仕上げることはできるのです。ところが、文章がいくつもつながっているような複雑なものになると、とたんに翻訳の精度が50%以下になることもあり得ます。

ニューラル機械翻訳は、学習データ(対訳データ)の蓄積が多ければ多いほど精度があがるもの。購入した機械翻訳に、ご自身の会社の業務内容に応じた学習データが充分に搭載されていなければ、その力は発揮できないかもしれません。高額な機械翻訳エンジンを購入したとしても、高度な翻訳結果が得られるとは限らないのです。そのあたりのことを詳しく説明せずに、営業トークを展開するセールスマンは、残念ながら翻訳に関する知識には精通していません。

また、機械翻訳エンジンは年々進化しており、毎年のように高性能な新製品が登場しています。より低コストで自社にあった製品が、他にもあるかもしれません。購入する前に、慎重に検討する必要があります。

機械翻訳の問題点|使い方を間違えると力を発揮できない

海外とのお取引のある企業や外国人労働者を多く受け入れている会社では、実際の営業や販売に関わるツールなどの翻訳作業以外にも、業務に必要な翻訳案件はたくさんあります。たとえば、海外との英語でのメールのやり取りや、海外企業の日本法人などで使用する資料やマニュアルなどの社内用ツールに、高額な翻訳費用をかけることができない場合がほとんどです。そういう時にも、機械翻訳を活用するのは有益な方法です。当社のお客様の中でも、実際に機械翻訳エンジンを導入し、活用されている企業様もいらっしゃいます。

ところが、使い方を理解していないと、まったく意味をなさない翻訳ができてしまうことがあります。機械翻訳にかけるデータの状態を把握し、理解しておくことも重要です。たとえば、ExcelやWord、PowerPointなどを使用してドキュメントを作成する時に、レイアウトの体裁を整えるために改行を入れていることはごく普通にあると思いますが、実は機械翻訳はこの「改行」が苦手です。文章の途中で改行が入っていると、その手前までを1つのグループと考えて翻訳してしまい、意味の通らない文章ができあがるのです。翻訳にかける場合は、文章の途中で入れている改行はすべて取り、一文の最初から最後までつながっている状態にしておく必要があります。

加えて、社内向け文書などは注意が必要です。一般的に、社内向け文書は文法的に不完全な文章が多く、また社内でしか通じない専門用語や言い回しも含んでいるため、機械翻訳ではうまく訳せない可能性が高いといえます。
また複数の句読点を含む文章や、代名詞の判断も機械翻訳は苦手です。こういった文書を機械翻訳にかける際には、あらかじめ原文を整理する工程(プリエディットといいます)が必要になる場合があります。

機械翻訳は、翻訳会社とのハイブリッドが成長のカギ

機械翻訳の発達によって、当社でも新しい事業領域の可能性が広がっています。当社では以前から「翻訳メモリ」という形で、これまでの翻訳資産を保存し、情報の蓄積を行ってきました。翻訳メモリは広く取り入れられていますが、「資産」として充分に活用できていない場合もあります。

当社が考えているベストな翻訳業務フローとは、まず翻訳メモリを活用して翻訳を行い、カバーできなかったところを機械翻訳で処理していくというスタイルです。最後には経験豊かな翻訳者の視点で総合的なチェックを行うという「ハイブリット型」が望ましいと考えています。さらに、蓄積された翻訳メモリを元に機械翻訳エンジンをカスタマイズすることで、機械翻訳の精度を向上させながら翻訳資産も蓄積していく、というイメージです。

従来、翻訳費用は高額になることが多く、予算には限りもあります。お取引先企業の多くでは、必要な翻訳作業のうち20%程度しかカバーできていないのではないかという試算もあるほどです。「機械翻訳」を活用することでコストダウンが実現できると、これまで手つかずの箇所に着手することもできるようになります。英語のみならず多言語展開を視野に入れるなど、より多角的な事業戦略も可能になります。結果的に翻訳会社としては、受注できる業務の幅が広がることにもつながるのです。

さらに、仕事は文章の翻訳だけにとどまりません。翻訳したデータや資料をもとに、カタログやマニュアル、WEBページの制作など、一連の業務を一手に引き受けることで、それぞれの企業の状況と目的に応じたトータル的なソリューションを提案できるのが当社の強みでもあります。一言で翻訳と言っても、翻訳だけで業務が完結することは少なく、実際に翻訳が使われる場面に合わせた制作業務の効率化と併せて考える必要があります。

これからは機械翻訳と翻訳会社の共存共栄の「ハイブリッド」型で、お取引企業とのさらなる関係強化ができるのではないかと期待しています。