更新日:2023年12月11日
公開日:2023年6月19日

はじめまして、アイ・ディー・エー株式会社 Webチームの堤です。
翻訳会社内のWeb制作部門で、年間20〜30の多言語サイトの制作・運営に携わっています。
今回は下記のお悩みをお持ちの方を対象に、多言語サイトの実践的な制作ポイントをご紹介します。

  • 海外向けに外国語のウェブサイトを作りたい
  • 2言語以上の多言語で「効率良く」ウェブサイトを作りたい
  • でも具体的に何から検討したらいいのかわからない

ポイントを押さえて制作することで、多言語サイトの効果はそのまま、当初想定の約1/4に制作工数を削減することも可能です。アイ・ディー・エーのウェブ制作部門では25年以上の制作実績から、組織ごとに異なる課題を解決する海外向け多言語サイトを制作しています。具体的なご相談や無料お見積りはお問い合わせフォームから承っています。

1. 制作の前に検討したい4つのポイントとは?

ウェブサイトである以上、多言語サイトでもまずはサイトの目的とゴール、それを実現するためのコンテンツや機能、大まかなサイト構造などの検討が必要になります。多言語サイトで外せないポイントとしては、下記が挙げられます。

  1. サイトの目的とゴール
  2. 展開する言語と数
  3. 翻訳コスト、運用更新コスト
  4. 多言語展開するコンテンツ
  5. 01 多言語サイトの目的とゴールを決定する

    単純に外国語・複数の言語でウェブサイトができればよい、という場合もあるかもしれませんが、多くの場合は組織の課題を解決するための方策として多言語サイトを検討されると思います。

    例えば下記のような課題は、それぞれ解決策(=ウェブサイトへの要件)も変わってきます。

    • 海外取引を増やすため、製品やサービスの情報を多言語で提供し、海外からの引き合いを増やしたい。
    • 海外現地法人に任せている現地サイトの更新が滞っているため、日本本社で一括して多言語サイトとして運用管理したい。
    • これから海外展開するにあたり、ブランドイメージや製品の強みを伝えるためにグローバルな英語サイトとして制作したい。

    サイトの仕様や機能、展開言語など影響の大きいポイントになりますので、少なくとも下記の点は多言語サイト制作の初期段階で明確にしておくことをお勧めします。

    • ウェブサイトを多言語で展開する目的
    • 多言語サイトに期待する役割
    • 達成すべきゴール

    02 展開する言語と数を検討する

    「どの言語で展開するか」「何ヵ国語で展開するか」というポイントです。アイ・ディー・エーにいただくお問い合わせの中でも、意外とこの点が定まっていない場合が見受けられます。

    展開言語を検討する際には下記の点を考慮することをお勧めします。

    ビジネスのターゲットとなる人々にアプローチするのに有効な言語を選ぶ

    多言語サイトのゴールを達成するために、どの言語で展開すれば最も効果的かという点を検討します。

    大きく「英語圏」と「ドイツ語圏」というビジネスであれば「英語とドイツ語」が候補になりますし、訪日外国人観光客を対象としたビジネスであれば、観光客数の多い「中国、韓国、台湾」が候補になります。ホテルや観光施設などの多言語サイトでは、これに英語を加えて下記の4言語で展開する場合が多いです。

    • 英語
    • 簡体字中国語(大陸向け)
    • 繁体字中国語(台湾向け)
    • 韓国語

    展開言語を検討する時には、「〇〇語」という言語名だけでなく「仕向地(しむけち)」で検討することも有用です。仕向地について詳しくはこちらの記事で解説しています。

    03 翻訳コスト、運用更新コストも考慮する

    多言語サイトでは、展開言語数を増やすと、それぞれの言語に翻訳するための翻訳費用や制作費用も増加することになります。

    テキスト量・ページ数の多いウェブサイトほど1言語追加したときの費用も大きくなりますので、規模の大きいコーポレートサイトや製品サイトの多言語対応では、展開言語の選択は重要になります。多言語サイトの相場や費用とボリュームの関係についてはこちらの記事で紹介しています。

    機械翻訳なら展開言語数の問題は解決できる?

    「機械翻訳を使えば翻訳の費用がかからないので、展開言語数の問題を解決できるのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。ただ2023年時点では複数の理由でメリットよりデメリットが大きく、機械翻訳をそのままウェブサイトに使用することは避けたほうがよいと思います。この点について詳しくはこちらの記事を参照ください。

    04 多言語展開するコンテンツを精査する

    どういったコンテンツを多言語サイトで展開するか、というポイントです。

    「現行の日本語サイトを丸ごと翻訳」して日本語のコピーサイトとすることをイメージされる方も多いのですが、多言語サイトの役割やゴールを達成するために必要となるコンテンツは何か、という点から検討することをお勧めします。

    とはいっても、いきなり完全新規で海外向け専用のコンテンツを作るということも稀ですので、多くの場合は既存の日本語のコンテンツや資料を抜粋・海外向けにアレンジすることが多いかと思います。

    多言語サイトに不要となりがちなコンテンツ

    • 海外展開しない製品やサービス
    • 採用情報
    • お問い合わせフォーム
    • 過去のニュース、国内向けの情報

    多言語サイトに必要なコンテンツ

    海外向け多言語サイトのキモとなるコンテンツです。自社の優位性を伝える技術情報や海外現地での導入事例、グローバルなサポート体制など、組織やビジネスの方針に沿って海外ユーザにアピールするコンテンツを展開できることが理想です。
    海外現地の需要や商習慣などを海外営業担当の方からヒアリングした上で、必要なコンテンツや見せ方伝え方を検討していく進め方をお勧めしています。

    これら4つの検討ポイントそれぞれについて、こちらの記事でより詳しく紹介しています。

    2. 海外向けSEOを考慮する

    海外向けの多言語ウェブサイトでも検索エンジンからの流入が大半を占めることに変わりはありませんので、検索エンジン対策(SEO)は重要です。では、海外を対象にしたSEOは国内向けのSEOとどんな違いがあるでしょうか?

    実は基本的なSEOの考え方は国内/海外で大きな違いがあるわけではありません。コンテンツの質と量、サイトの権威性、基本的な内部対策・技術的なSEO対策は変わらず重要です。

    Google公式ドキュメントに見る、海外向けSEOのポイント

    一方で国内向けSEOでは意識することのない注意点等も多くあり、例えばGoolgeの公式ドキュメントには多地域・多言語サイトの注意点として下記のポイントが挙げられています。

    • Googleの「地域ターゲティング」に基づき、多言語サイトのターゲットに応じたURL構造を採用する
    • そのためのURL構造は、いくつかの方式を要件に応じて使い分ける
    • ページ単位で言語を分ける(複数言語を1ページに併記しない)
    • 機械翻訳は使用しない(使ったページは検索エンジンにインデックスさせない)
    • hreflang属性を使用し、言語間のページの関係を検索エンジンに知らせる
    • ユーザの言語設定で自動的にページをリダイレクトすることは避ける

    多言語サイトのURL構造とページ言語

    上記のポイントのうち、最も重要かつ根本的なのは「URL構造」と「ページ単位で言語を分ける」という点です。

    URL構造とは、ドメインやサブドメイン、ディレクトリで言語や対象地域を(検索エンジンが)識別できることを指します。例えば下記のような構造で、取得できるドメインやターゲット地域等に応じて検討することになります。

    URL構造
    ドメインで分ける example.jp(日本)
    example.de(ドイツ)
    example.sg(シンガポール)
    サブドメインで分ける jp.example.com
    de.example.com
    sg.example.com
    ディレクトリで分ける example.com/jp/
    example.com/de/
    example.com/sg/

    検索エンジンはページ単位で言語を認識しますので、上記の構造でURLから言語を識別できるようにした上で、1ページ=1言語(複数言語を1ページに併記しない)ことが重要です。

    海外向けSEOについてはこちらの記事で他のポイントも含めて解説していますので参照ください。

    海外向けのウェブサイトデザインで制作する

    「海外向けのサイトデザインは国内向けとどう違うの?」「ターゲット国の人たちに伝わるデザインで制作したい」というご相談もよくいただきます。

    確かに、日本国内向けと海外向けではデザインの傾向が異なる部分があります。ただ、近年よく感じるのは、新しいウェブデザインのトレンドが世界に広まっていくスピードがどんどん速くなり、「この地域にはこういうデザイン」という傾向も少なくなっているということです。

    日本向けデザインの方が独特?

    どちらかというと「日本国内向け」のデザインが海外全般のトレンドから外れて独特な点が多く、例えば北米向けと欧州向けで大きな違いがあるかというと、そうでもないような気がしています。

    この点は多言語ウェブ制作部門で10年以上のキャリアのあるデザイナーのこちらのインタビュー記事が参考になるかもしれません。

    4. 海外向けのサーバインフラ・CMSの選び方

    海外向けや複数言語のウェブサイトを検討する上では「サーバの場所」と「CMSをどう選ぶか」も重要なポイントになります。

    海外から日本のサーバを閲覧すると表示が遅い!?

    日本国内向けのウェブサイトではあまり気にすることはありませんが、海外から日本のサーバに設置したウェブサイトを閲覧すると、ページの表示が遅くなることをご存知でしょうか。

    これは物理的な距離に起因する通信遅延の影響があるためで、一般的に東南アジア地域より北米地域は遅く、欧州、南米、アフリカと日本からの(ネットワーク的な)距離が離れるほど通信遅延は顕著になります。

    海外をターゲットにするウェブサイトでは、こうした通信遅延の対策も含めたサーバインフラを検討することをお勧めしています。

    下記リンク先の記事ではCDNを使ってこの問題を回避する方法や、特殊な事情が多い中国向けのサーバインフラについて詳しく解説しています。
    参考:海外向け多言語サイトのサーバインフラの選び方!中国向けは要注意

    多言語サイトのCMS選定ポイントとは?

    一定規模のウェブサイトでは、何らかのコンテンツ管理システム(CMS)を導入することがほとんどだと思います。

    外国語のウェブサイト、特に複数言語を扱う多言語サイトのCMSはどう選べばよいでしょうか。操作性やセキュリティ面だけではなく、複数言語のページをどう扱うかという大きなポイントが存在します。

    多言語サイトのCMS選定ポイント:

    • 言語ごとにサイト構造とコンテンツを柔軟に変更できること
    • 様々なURL構造に対応できること
    • 言語を追加するときのコストが低いこと
    • 言語間のページのつながりがシステム化されていること
    • CMS管理画面が多言語対応していること
    • 使いやすいCMSであること

    参考:海外向け多言語ウェブサイトのCMSを選ぶ7+1のポイント

    サイト構造・URL構造が柔軟に対応できること

    例えば日本語・英語・簡体字中国語の3言語のサイトで、各言語のページツリーが完全に同一になることは稀です。

    • 英中サイトではそれぞれに展開する製品・サービスを現地向けにアレンジして掲載したい
    • 採用情報や日本向けのコンテンツは英中サイトには必要ない

    ということが普通だと思います。

    多言語サイトを管理するCMSでは、こうしたサイト構造やコンテンツの違いに柔軟に対応できる必要があります。前述のURL構造についても、様々なパターンに対応できることが望ましいです。

    技術的な要件を満たした上で「使いやすい」CMSであること

    サイトの対応言語を1つ増やすごとに大きな改修費用が必要になるCMSは多言語サイト向きとは言えませんし、前述のhreflangをシステムレベルでサポートするためにはCMSの設計レベルで多言語対応を想定している必要があります。

    こうした技術的な要件を満たした上で、

    • 忙しい担当者でも更新しやすい
    • 日本語を更新すれば、多言語ページの翻訳と更新は外部に任せてしまえる

    ようなCMSが望ましいと思います。

    多言語サイトのCMSについてはこちらの記事で具体的な例を挙げながら解説していますので参照ください。

    ここまでの内容と関連する資料をこちらからダウンロードしていだけます。

    5. 多言語サイトの制作費用や相場はどれくらい?

    検索エンジンで「多言語サイトの制作費用」を調べると「およそ500万円~2,000万円」のような情報がヒットします。本当にそれくらいの費用が必要になるでしょうか。

    多言語サイトの制作パターンは大きく下記の3つに分類されますが、予算規模が大きくなるのは「A」の日本語サイト制作も含めたパターンだと思います。純粋に多言語サイト部分だけを見ると、もっとコストを抑えて制作することも十分可能です。

    • A:日本語と多言語を同時に制作する場合
    • B:既存の日本語サイトをベースに多言語サイトを制作する場合
    • C:日本語は作らず多言語サイトだけを制作する場合

    制作費用に影響の大きい工程をチェック

    言語サイト制作を「制作費用」という観点で見ると、下記の4つの工程に分けられます。

    1. 多言語サイトの設計工程
    2. システム関連の検討工程
    3. 多言語翻訳工程
    4. サイト制作工程

    このうち「サイトの設計工程」や「システム関連の検討工程」はこの記事でも紹介してきたポイントです(もっと詳しく知りたい方はこちら)。

    多言語翻訳やサイト制作の具体的な部分については、多言語の翻訳と制作を専門としているアイ・ディー・エーならではの強みがあります。

    • 機械翻訳と人力翻訳のハイブリッド活用で翻訳コストを縮小
    • HTML直接翻訳で制作工数を大幅に低減

    制作費用の具体的な内容についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

    6. 3言語600ページのサイトを1/4の費用で制作!?

    海外向け多言語サイトの作り方のまとめとして、多言語サイトの展開例を紹介します。
    これまで挙げたポイントを適切に検討することで、多言語サイトの効果を落とさずに不要な制作費用を大きく削減することも可能です。

    展開例: 200ページの日本語サイトをどう多言語展開するか

    例えば製造業メーカーの日本語ウェブサイトが約200ページの規模で存在し、そこから英語・ドイツ語・フランス語へ多言語展開する場合を考えてみます。

    単純に200ページを3言語に展開すると 200ページx3言語 = 600ページということになります。
    ここに下記の点を検討して、展開ページを精査してみます。

    • 海外展開のない事業の製品ページ、採用情報、古いニュースは多言語化しない
    • IR情報は日英で掲載。ドイツ語・フランス語からは英語ページにリンク
    • スペックや特徴が中心の製品詳細ページも英語のみで掲載

    具体的な展開例:

    サイト ページ数 主な展開コンテンツ
    日本語サイト 約200ページ 自社の強み、会社情報、全製品情報、IR情報、採用情報、過去ニュース
    英語サイト 約100ページ 自社の強み、会社情報、海外展開する製品情報(一覧・詳細)、IR情報
    ドイツ語サイト 約30ページ 自社の強み、会社情報、海外展開する製品情報(詳細ページ除く)
    フランス語サイト 約30ページ ドイツ語と同じ想定

    こうすることで多言語サイトのページ数は600ページ→180ページと大きく削減することができます。
    むやみに規模を縮小したわけではなく、ターゲット地域・ユーザ像・優先度の高いコンテンツを検討した上で、多言語ウェブサイトの効果は維持しつつ制作費用を最適化する考え方です。詳しくはこちらの記事で項目を分けて解説していますので参照ください。

    まとめ:基本を押さえて賢く検討、ビジネスに役立つ海外向けサイトを

    海外向けウェブサイト・多言語サイトは、単に翻訳された外国語サイトではなく、実際にビジネスに貢献できるウェブサイトであることが重要だと思います。

    そのためにも多言語サイトのベース部分は賢く無駄なく検討し、より実践的でサイト訪問者にもお客様にもメリットのある海外向けウェブサイト制作をご提案していきたいと考えています。

    この記事では大きく6つの基本的なポイントを紹介しましたが、実際の事例では組織ごとに異なる課題や要件が入り混じることも多くあります。
    それらを解きほぐし、サイトのゴールに近づけ、結果としてお客様のビジネスに役立つサイト制作ができるよう心がけています。

    海外向け/多言語ウェブサイト制作について、具体的な検討を進める上でご不明な点、ご相談事項などございましたら下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問合せください。多言語ウェブ制作部門のディレクターがご対応いたします。

    WEBチーム:堤

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